「犯罪捜査規範」は警察官向けの規則です。 しかし、被害者にとっても捜査の実際を知る上で参考になりますし、刑訴法と併せて見ることによって、警察による捜査の裏側を 伺い知ることが出来ます。また、「なぜ警察は○○するのだろう?、××しないのだろう?」などの疑問の他、被害者が堂々と 警察に頼めることなども明らかになると思います。 ここではその規範を抜粋して紹介します。 |
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| <犯罪捜査規範 (国家公安委員会規則)> |
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(この規則の目的) 第一条 この規則は、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を 定めることを目的とする。 (秘密の保持等) 第九条 捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者 (犯罪により害を被つた者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように 注意しなければならない。 (被害者等に対する配慮) 第十条の二 捜査を行うに当たつては、被害者又はその親族(以下この節において「被害者等」という。)の心情を理解し、 その人格を尊重しなければならない。 2 捜査を行うに当たつては、被害者等の取調べにふさわしい場所の利用その他の被害者等にできる限り不安又は 迷惑を覚えさせないようにするための措置を講じなければならない。 被害者に不安を与えないように聴取することが求められています。 警察によっては「取調室」ではなく、ストレスを感じさせない部屋を用意して聴取したり、顔をできるだけ見られ ずに、部屋に入れる配慮などがされているようです。女性警官による聴取も、これに基づく対応でしょう。 しかし、これを無視して被害者感情を逆撫でする警察官がいることも事実です。 (被害者等に対する通知) 第十条の三 捜査を行うに当たつては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他 被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。ただし、捜査その他の警察 の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、 この限りでない。 刑事訴訟手続きの概要説明や、捜査経過などを被害者に知らせなければいけないことになっています。 しかし、現実にどれだけきちんと為されているかは不明、疑問です。 (被害届の受理) 第六十一条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるか どうかを問わず、これを受理しなければならない。 2 前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。 この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。 被害届は全国どこの警察署でも受け付けてくれると言うことです。 ※私は、被害届受理拒否の事例に遭遇しました。「被害と呼べる被害事実がない」というのが警察の言い分でした。 脅迫等の事実があったにも拘わらずです。犯人は被害者が届け出しようとしていた罪で、被害者の110番により 後日(現行犯)逮捕されました。この事例からも分かるように、警察がこの規範を遵守しているかどうかには疑問が あります。 (告訴、告発および自首の受理) 第六十三条 司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうか を問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。 2 司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に 移さなければならない。 告訴は全国どこの警察署でも受け付けてくれると言うことです。しかし・・・ 六十九条へ ※ここでよく問題にされるのが、捜査規範では「受理しなければならない」とされているのに、受理されるとか受理 されないとかの言葉が存在し、現実に不受理などの実態があることです。規則・規範、法律上、告訴に関して 受理という言葉はありますが、預かり(受け取り)、不受理という語句はなかったと思います。 捜査機関の現場で、勝手に受理という言葉の他に預かり(受け取り)という概念が都合良く使われているのだ と思います。従って「とりあえず預かるが、受理するしないは別問題」という言葉は本来存在し得ません。 規則上は、預かり(受け取り)=受理なのです。当然捜査するに値しない告訴や証拠不十分で捜査に着手でき ないような告訴もあるでしょう。しかし、全数受理してその後どうするか・・・ 告訴の内容や証拠類を吟味して 処理(捜査する、しないなど)を決めるのが本来の筋です。 (自首調書、告訴調書および告発調書等) 第六十四条 自首を受けたときまたは口頭による告訴もしくは告発を受けたときは、自首調書または告訴調書もしくは告発調書 を作成しなければならない。 2 告訴または告発の口頭による取消しを受けたときは、告訴取消調書または告発取消調書を作成しなければならない。 口頭であっても被害者が告訴の意思を示せば、警察は告訴調書の作成に着手しなければいけない こととなっています。 ※被害者が告訴の意志を示したにも拘わらず、警察がそれを拒んだ場合などでは、 これを逆手にとって「警察で相手にされないなら、検察で告訴の手続きをして貰います」と言えば、 まず間違いなく警察は直ぐに告訴調書を作成するはずです。告訴受付拒否の実体を検察に知られるなど、 警察としては絶対に避けなくてはいけないことです。検察からの指導があるかもしれません。 体裁を重視する警察には、「恥」以外の何物でもありません。 こんなまどろっこしいやり方を選ばなくても、直接検察に告訴すれば済むことではありますが。 (書面による告訴および告発) 第六十五条 書面による告訴または告発を受けた場合においても、その趣旨が不明であるときまたは本人の意思に適合しない と認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、またはその供述を求めて参考人供述調書(補充調書)を 作成しなければならない。 (事件の移送) 第六十九条 警察本部長または警察署長は、告訴または告発のあつた事件が、管轄区域外の犯罪であるため当該警察に おいてこれを処理することができないとき、またはこれを処理することが適当でないと認められるときは、関係警察に 対してすみやかに移送の手続をとらなければならない。 2 前項の規定による移送をしたときは、すみやかに、告訴人または告発人にその移送先を通知しなければならない。 告訴があっても、それが管轄区域外の事件の場合、大抵その管轄警察署に捜査が移されると言うことです。 捜査の迅速化を期すためにも、告訴状はできる限り管轄警察署に出すべきでしょう。 (親告罪の要急捜査) 第七十条 警察官は、親告罪に係る犯罪があることを知つた場合において、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集 その他事後における捜査が著しく困難となるおそれがあると認めるときは、未だ告訴がない場合においても、捜査しな ければならない。この場合においては、被害者またはその家族の名誉、信用等を傷つけることのないよう、 特に注意しなければならない。 親告罪にあたる事件でも、証拠隠滅や逃亡の恐れなどが懸念されるときは、警察の判断で捜査に着手する ことがあると書かれています。このような事件の場合、被疑者は任意の取り調べではなく、逮捕・拘留される ことが多いと思います。第百二十一条も参照ください。 (親告罪の告訴取消の場合の処置) 第七十一条 親告罪に係る犯罪につき捜査を行い、事件を検察官に送付した後、告訴人から告訴の取消を受けたときは、 直ちに、その旨を検察官に通知し、必要な書類を追送しなければならない。 (任意捜査の原則) 第九十九条 捜査は、なるべく任意捜査の方法によつて行わなければならない。 捜査の基本は「任意」であり、「逮捕」は例外的措置という大前提です。 ※ 参考・重要 <刑事訴訟規則> 第百四十三条 逮捕状を請求するには、逮捕の理由(逮捕の必要を除く逮捕状発付の要件をいう。以下同じ。)及び逮捕の 必要があることを認めるべき資料を提供しなければならない。 第百四十三条の三 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに 犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない 等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。 しかし、現実にはもっと柔軟に(捜査機関の意向で?気分で?)運用されているようです。 証拠隠滅とまで行かなくても、被疑者都合の任意聴取では、入れ知恵を貰えるとか、被疑者に有利な工作ができる などの、被疑者有利の状況を作り出す隙を与えてしまうのも事実です。逮捕するかどうかは、捜査機関の「やる気」 に負うところが大きいのかもしれません。※安易な逮捕に非難の声があるのも、また事実です。 (承諾を求める際の注意) 第百条 任意捜査を行うに当り相手方の承諾を求めるについては、次に掲げる事項に注意しなければならない。 一 承諾を強制し、またはその疑を受けるおそれのある態度もしくは方法をとらないこと。 二 任意性を疑われることのないように、必要な配意をすること。 (任意出頭) 第百二条 捜査のため、被疑者その他の関係者に対して任意出頭を求めるには、出頭すべき日時、場所、用件その他必要な 事項を明らかにし、なるべく呼出状(別記様式第七号)によらなければならない。この場合において、被疑者又は重要な 参考人の任意出頭については、警察本部長又は警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。 (実況見分) 第百四条 犯罪の現場その他の場所、身体または物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければ ならない。 2 実況見分は、居住者、管理者その他関係者の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載して おかなければならない。 3 実況見分調書には、できる限り、図面および写真を添付しなければならない。 「必要があるときは、実況検分を行わなければならない」・・・ 不要なら行う必要はないと言うことでしょうが、 通常は 話だけではよく分からない、人によって受け取り方が違う などの理由で、ほぼ全数行われるのでは ないかと思います。実況検分で物理的な関係がより明らかになり、供述の嘘や矛盾点が発見できるという 効果も期待されているのだろうと考えます。 (実況見分調書記載上の注意) 第百五条 実況見分調書は、客観的に記載するように努め、被疑者、被害者その他の関係者に対し説明を求めた場合に おいても、その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならない。 2 被疑者、被害者その他の関係者の指示説明の範囲をこえて、特にその供述を実況見分調書に記載する必要がある 場合には、刑訴法第百九十八条第三項 から第五項 までおよび同法第二百二十三条第二項 の規定によらなければ ならない。この場合において、被疑者の供述に関しては、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を 告げ、かつ、その点を調書に明らかにしておかなければならない。 基本的に事件関係者の説明以上のこと、自分の推測を交えて調書に記入してはいけないということですね。 (逮捕権運用の慎重適正) 第百十八条 逮捕権は、犯罪構成要件の充足その他の逮捕の理由、逮捕の必要性、これらに関する疎明資料の有無、 収集した証拠の証明力等を充分に検討して、慎重適正に運用しなければならない。 バカボンの”本官”のように、むやみやたらに”タイホする”と言うな ってことです・・・ 話が古い・・・。 (親告罪事件の逮捕状請求) 第百二十一条 逮捕状を請求するに当つて、当該事件が親告罪に係るものであつて、未だ告訴がないときは、告訴権者に対して 告訴するかどうかを確かめなければならない。 第七十条と併せて見ると良いと思います。 親告罪の場合、告訴権者の了承なく「捜査」することは認められていますが、逮捕(送検)に関しては、 告訴権者の告訴が必要になるということだと思います。でなければ親告罪の意味がありませんものね。 (逮捕状請求の疎明資料) 第百二十二条 通常逮捕状を請求するときは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること及び逮捕の必要が あることを疎明する被害届、参考人供述調書、捜査報告書等の資料を添えて行わなければならない。 ただし、刑訴法第百九十九条第一項 ただし書に規定する罰金、拘留又は科料に当たる罪について通常逮捕状を請求 するときは、更に、被疑者が定まつた住居を有しないこと又は正当な理由がなく任意出頭の求めに応じないことを疎明 する資料を添えて行わなければならない。 「ただし」以降の説明: 比較的軽微な罪を犯した被疑者を逮捕するときは、通常以上の条件が必要ということ (任意性の確保) 第百六十八条 取調べを行うに当たつては、強制、拷問、脅迫その他供述の任意性について疑念をいだかれるような方法を 用いてはならない。 2 取調べを行うに当たつては、自己が期待し、又は希望する供述を相手方に示唆する等の方法により、みだりに供述を 誘導し、供述の代償として利益を供与すべきことを約束し、その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を 用いてはならない。 3 取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に行うことを避けなければならない。 アメリカには「司法取引(本当のことを言って捜査に協力するなら、刑を軽くするなど)」がありますけどね。 (自己の意思に反して供述をする必要がない旨の告知) 第百六十九条 被疑者の取調べを行うに当たつては、あらかじめ、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければ ならない。 2 前項の告知は、取調べが相当期間中断した後再びこれを開始する場合又は取調べ警察官が交代した場合には、 改めて行わなければならない。 被疑者は”言いたくないことは言わなくて良い”、それを警察官は予め告げなくてはいけないということです。 いわゆる黙秘権で、憲法38条「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」に基づく規範です。 取調べに際して捜査官が黙秘権を告知しなかった場合、その取調べにおいての供述は裁判の証拠にする ことができないとされています。だから、しつこいくらいにそれを告知するのです。 私が入手した被疑者供述調書にも、初めに必ず「黙秘権、任意供述に関する確認を取った」旨記されています。 勿論、被害者にも黙秘権はあります。不利な供述を敢えてする必要がないことは、被疑者と同様です。 警察のHPやパンフには「迅速、正確な捜査のために全てを話してください」みたいなことが書かれていますが、 話したことが正しく記録されるか、真摯に受け取られるかどうかは別問題です。 (証拠物の呈示) 第百七十一条 捜査上特に必要がある場合において、証拠物を被疑者に示すときは、その時期及び方法に適切を期すると ともに、その際における被疑者の供述を調書に記載しておかなければならない。 (裏付け捜査の必要) 第百七十三条 取調べにより被疑者の供述があつたときは、その供述が被疑者に不利な供述であると有利な供述であるとを 問わず、直ちにその供述の真実性を明らかにするための捜査を行い、物的証拠、情況証拠その他必要な証拠資料を 収集するようにしなければならない。 一方、被害者側の供述に対する裏付け捜査は義務づけられていないようですね。 被害者側は、あくまで捜査の協力者・参考人ですから、全ては警察の判断優先の模様です。 (伝聞供述の排除) 第百七十四条 事実を明らかにするため被疑者以外の関係者を取り調べる必要があるときは、なるべく、その事実を直接に 経験した者から供述を求めるようにしなければならない。 2 重要な事項に係るもので伝聞にわたる供述があつたときは、その事実を直接に経験した者について、更に取調べを 行うように努めなければならない。 当然ですが、噂や推測の話に紛らわされてはいけないと言うことでしょう。 (供述調書) 第百七十七条 取調べを行つたときは、特に必要がないと認められる場合を除き、被疑者供述調書又は参考人供述調書を 作成しなければならない。 私たちの担当刑事は、一部行いませんでした。明らかな手抜き捜査です(検察の指摘あり)。 2 被疑者その他の関係者が、手記、上申書、始末書等の書面を提出した場合においても、必要があると認めるときは、 被疑者供述調書又は参考人供述調書を作成しなければならない。 (供述調書作成についての注意) 第百七十九条 供述調書を作成するに当たつては、次に掲げる事項に注意しなければならない。 一 形式に流れることなく、推測又は誇張を排し、犯意、着手の方法、実行行為の態様、未遂既遂の別、共謀の事実等 犯罪構成に関する事項については、特に明確に記載すること。 二 必要があるときは、問答の形式をとり、又は供述者の供述する際の態度を記入し、供述の内容のみならず供述した ときの状況をも明らかにすること。 三 供述者が略語、方言、隠語等を用いた場合において、供述の真実性を確保するために必要があるときは、 これをそのまま記載し、適当な注を付しておく等の方法を講ずること。 2 供述を録取したときは、これを供述者に閲覧させ、又は供述者が明らかにこれを聞き取り得るように読み聞かせるととも に、供述者に対して増減変更を申し立てる機会を十分に与えなければならない。 供述調書に署名・捺印する前に良く読んで(聞いて)、不満な点があれば修正を求められると言うことが 書かれています。 供述調書を「まあ、こんなもんだろう」などと軽率に扱わないようにしてください。調書は証拠です。 (送致及び送付の指揮) 第百九十三条 捜査を行つた事件について送致又は送付の手続をとるに当たつては、警察本部長又は警察署長の指揮を 受けて行わなければならない。 (送致書及び送付書) 第百九十五条 事件を送致又は送付するに当たつては、犯罪の事実及び情状等に関する意見を付した送致書又は送付書を 作成し、関係書類及び証拠物を添付するものとする。 警察は調書や証拠以外に、彼らの意見書を付けて検察に送ると言うことです。 事情聴取、取り調べ時の態度や反省具合なども付記されるものと思われます。 事実以外に記される、被害者、被疑者の内申書のようなものと思われますので、 その点留意が必要かも知れません。 (微罪処分ができる場合) 第百九十八条 捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないと あらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。 警察が捜査した事件全てが送検されるわけではないと言うことですね。これを微罪処分と言います。 検察の不起訴、起訴猶予とは違います。それ以前の段階です。 性犯罪の場合、これに該当することはまずありません。謝って済むようなレベルの問題です。 (微罪処分の際の処置) 第二百条 第百九十八条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置を とるものとする。 一 被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。 二 親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき 必要な注意を与えて、その請書を徴すること。 三 被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。 |