刑事訴訟を進めるにあたり、犯罪被害者に関係する法律は主に刑法と刑事訴訟法(略して刑訴法)です。これらの中のポイントを 知っておくことは、訴えを論理的に進めるためにも重要です。ここでは犯罪者を罰する諸規定を定めた刑法について、そのポイント をご紹介したいと思います。刑法や刑訴法は公法<国と国民の間の定め>ですので、被害者と加害者間のやりとりに関するもの ではありません。 参考: 民事訴訟では私法(ベースとなる民法/一般法&追加された法律/特別法)に基づいて賠償金請求をします。 <関係する条文/刑事罰関連> ![]() 第二十二章 わいせつ、姦淫及び重婚の罪 (強制わいせつ) 第百七十六条 十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。 十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。 (強姦) 第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。 十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。 (準強制わいせつ及び準強姦) 第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、 第百七十六条の例による。 2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、 前条の例による。 (集団強姦等) 第百七十八条の二 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、 四年以上の有期懲役に処する。 (未遂罪) 第百七十九条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。 (親告罪) 第百八十条 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又は これらの罪の未遂罪については、適用しない。 (強制わいせつ等致死傷) 第百八十一条 第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は 三年以上の懲役に処する。 2 第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は 五年以上の懲役に処する。 3 第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。 (淫行勧誘) 第百八十二条 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 <難解且つ不透明な法律> 意味は理解できても判断に悩みます。 私は素人ですので詳しい解説は致しませんが、少しだけポイントを挙げて説明を加えたいと思います。 ・ 13歳: この年齢の意味するところは、「被害者が性交渉に対する理解が未熟な13歳未満であれば、如何なる理由があれど も無条件で厳罰に処する」という意味が含まれています。 ・ 親告罪: 加害者が単独犯である場合、被害者の訴えなくしては、犯人を罰することができません。 一方、複数犯による犯罪の場合は、被害者の訴えや同意なくして捜査を開始することを表しています。 ・ 犯罪の結果被害者が傷を負った場合、罪が一気に重くなることが記されています。 ※懲役3年以下の刑については、初犯などの場合、執行猶予が付く場合が多いようです。しかし、それ以上の刑については 執行猶予の適用外で、実刑となります。最長3年の刑と、最短4年の刑では雲泥の差があります。 第四章 刑の執行猶予 (執行猶予) 第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、 情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。 一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から 五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 ※ページ下方に執行猶予関連の内容を記しています ・ 「暴行又は脅迫を用いて」とか「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて」と ありますが、”身体的暴行や言葉による直接的脅迫はなかったが、恐怖の余り何もできなかった”場合どうなるのか?それが 「人の心神喪失若しくは・・・」にあたるのか?強姦神話と併せ、被害者の突き当たる大きな壁となっているのは事実でしょう。 ・ 心の傷は「傷害」? 一週間、二週間で完治する体の傷(例えばスリ傷、打撲傷)は立派な傷害。 では被害者の人生・時間を奪い取り、長期間にわたって苦しめ続けるPTSDやASDは? 医学分野での認定基準はありますが、残念ながら刑事訴訟(民事訴訟)における認定基準はありません。専門医の診断書が あっても、因果関係などが争われ、なかなか認められないと言うのが現実なのです。 以上の2点に関し警察・検察の事情聴取時、無理解な担当者にあたれば、被害者は重ねて失意のどん底に陥れられることになり ます。また加害者は、取り調べや裁判の場でその点について必死に否定し、被害者感情を逆なでしてくることも多いのです。 訴える人(被害者)に悪意や虚偽が認められない限り、被害者の望まざる性行為は、例え未遂であっても、事実としてあからさまな 抵抗がなかったとしても、それらは全て強姦である! そして、一定の条件を満たす医師が「事件に起因する」と認定し、それを理 論的にうち崩す反論がない限り、精神障害は体の傷と同様に「傷害」と して無条件で認めるべきである! ・・・私の意見です。 <犯罪者に優しい罰則> ![]() また、罰則が強化されたとは言え、強盗罪に比べ性犯罪に対する罰則がまだまだ甘いのも問題です(強盗罪は実刑確定)。 性犯罪に対する罰則は、傷害罪と強盗罪のほぼ中間。性犯罪では「被害者は何も失っていない」とでも言うのでしょうか? 更に、強盗罪では被害者が抵抗したかどうかは大きな問題にはならないのです。 第三十六章 窃盗及び強盗の罪 (強盗) 第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役 に処する。 ※強姦罪は三年以上の有期懲役 (強盗致死傷) 第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は 無期懲役に処する。 ※強制猥褻致傷罪では無期又は三年以上の懲役 強姦致傷罪では 無期又は五年以上の懲役 <参考: 未遂に関する部分> 第八章 未遂罪 (未遂減免) 第43条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。 ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。 ※現実には、既遂罪の「半分」で運用されているようです <参考: 執行猶予について> 1.裁判官が執行猶予を付けるとき これを規定している条文は刑法第二十五条です(前出)。 では、実際にどのような場合に裁判官は執行猶予を付けるのか、簡単に言えば 「犯罪の内容、被害の程度、被告人の前科・反省態度、被害者感情・回復具合、示談成立の有無などの総合判断 によって」ということになります。全て裁判官の思いや判断次第です。 単なる交通違反などの罪(罰金刑)の他に、過去に重い罪を犯していないことが一つの前提になるようですし、勿論 過去に同様な犯罪を起こしていないこと(再犯でないこと)も重要な要因となります。 加えて、社会の中で更生が図られると判断されることなどの他・・・ 「示談が成立していること」も、執行猶予を与える かなり大きな 要因となります。 2.執行猶予が取り消されるとき (執行猶予の必要的取消し) 第26条 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。 ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、 又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。 一 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言波しがないとき。 二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、 その刑について執行猶予の言渡しがないとき。 三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。 (執行猶予の裁量的取消し) 第26条の2 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。 一 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。 二 第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、 その情状が重いとき。 三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき。 現実の運用は、 事故を伴わない単なる交通違反くらいでは、執行猶予を取り消される可能性は小さい模様です。 ただし法律上は、第26条の2にあるように、交通違反のような単なる罰金刑でも取り消すことができるとされています。 それもこれも 裁判所、裁判官次第と言うことです。 執行猶予中に同じような罪を犯したとか、逮捕されるに値するような罪を犯したとかの場合には、必然的に執行猶予は 取り消されるでしょう。 また、交通事故を起こして、それが人身事故(業務上過失致傷)であれば、その態様(過失割合や 被害者の怪我の状態) 次第では執行猶予が取り消される可能性も決して小さくないようです。 なお、執行猶予が取り消された場合は、猶予刑が開始されてから取り消されるまでの間の時間は計算に入らず、 取り消された時から判決の刑期(懲役3年なら、そのまま3年)が始まることになります。 |